二重基準 2014 5 11
オバマ政権は、ロシアに対してはライオンのごとく吠え、
中国に対しては、「借りてきた猫」のように、おとなしい。
書名 Newsweek 2014 5 13 ニューズウィーク日本版
「ロシアを読み違えるアメリカ」
ブッシュ政権時代にNSCのロシア担当だったグレアムは、
アメリカ政府が、ロシアの世界観を正しく理解できていないとみる。
プーチンは、ウクライナを支配し、
その発展と繁栄に責任を負いたいわけではない。
「露骨にロシアと敵対する組織」、
つまり、NATOにウクライナが加わらないという確約が欲しいだけだという。
ウクライナをNATOに加盟させないと保証すればいいと、
ロンドン大学のリーベン教授は指摘する。
(中略)
だが、欧米外交官のロシア不信は根深い。
その多くは、冷戦時代に育ったため、
ロシアへの不信感を捨て切れず、
関係改善のチャンスを逃してきた。
9.11テロの際、
ホワイトハウスに、いち早く協力を申し出たのは、
プーチンだった。
アフガニスタンに駐留するNATO軍向けの物資が、
自国の領土を通過することも許可してきた。
ロシアは、軍用機での傷病兵の搬送まで提案したらしい。
だが、「アメリカは、断った。
米軍基地にロシア兵を立ち入らせたくなかったからだ」と、
グレアムは言う。
「理にかなった提案を、
アメリカは、にべもなく何度も断った。
ロシアとの関係を改善したかったなら、
申し出を受け入れておくべきだった」
ところが、アメリカは、
NATOの東方拡大を推し進め、
旧敵との関係改善に寄せるロシアの思いを踏みにじった。
「ばかにされたと、彼らは感じている」
(引用、以上)
この記事にある「欧米外交官のロシア不信は根深い。
その多くは、冷戦時代に育ったため、
ロシアへの不信感を捨て切れず、
関係改善のチャンスを逃してきた」というところは興味深いですね。
実は、私も、冷戦時代に育ったのです。
しかも、その当時、ロシア(ソ連)は、日本の仮想敵国だと、
何度も何度も教えられてきました。
しかし、私は、冷戦終結後、
そういう固定観念は、「リセット」しました。
一方、私は、中国の古典文学や思想を学んで育ちました。
しかし、「親中派」にはなりませんでした。
それは、なぜか。
実は、私は、古典文学や思想だけでなく、兵法も学んだからです。
中国の兵法を学んだ者としては、
今の中国及び今後の中国が、危険なものとして見えます。
攻めと守り 2014 4 19
相変わらず、欧米は、
「ウクライナ問題」で大騒ぎですが、
これを軍事的に見れば、どう見えるか。
それは、2014年4月10日の読売新聞の記事にあったように、
中国の「攻め」とロシアの「守り」となるでしょう。
近年、欧州(EUやNATO)は、確実に東へと拡大してきました。
つまり、ロシア(ソ連)は、東へと後退してきたのです。
要するに、ロシアは、守りと後退を繰り返して、
ついに、その攻防がロシア国境近くまで及んでいるということです。
一方、中国は、どうか。
これは、「攻め」と言ってよいでしょう。
歴史的に、中国は、「海禁政策」を取っていました。
つまり、海を暗黒のものと考え、海に進出することを避けてきたのです。
しかし、最近は、その中国が、
あえて海に進出してくるのですから、尋常なものではありません。
そういうわけで、中国の周辺国が危機感を感じるのは、自然でしょう。
今のところ、日本は、尖閣諸島の問題で、
アメリカに泣きついていますが、
「あの時は、のん気なことを言っていたなあ」と思う時が来るでしょう。
やがて、東南アジア諸国が、日本に対して、
「南シナ海を何とかしてくれ」と泣きついてくるようになるでしょう。
要するに、アメリカが当てにならないからです。
今のところ、アメリカは超大国ですが、
やがて、誰の目にも「アメリカが地域大国になった」と思う時が来るでしょう。
日本の海軍力は、世界第2位とも世界第3位とも言われています。
学者や政治家が、憲法9条をめぐって「神学論争」に夢中になっているうちに、
日本の海軍力が、世界トップレベルになってしまったのです。
東南アジア諸国は、こう考えるでしょう。
「それほどの海軍力を持っているならば、我々を助けてくれ。
同じ民主主義国同士で助け合うべきだ」
日本では、アメリカとの集団的自衛権をどうすべきかについて、
議論が白熱していますが、
今頃、そんな寝ぼけたことを言っているとは、
「将来の構想力がない」と言わざるを得ません。
アメリカ不在の世界において、
東アジアの海軍力の中核を担うのは、日本です。
そういうわけで、集団的自衛権の議論は、時代遅れであり、
本来ならば、そういう議論は数十年前に行うべきだったのです。
今は、東アジアの海の安全保障は、
日本の海軍力で、どうやって維持するかを考えるべき時代です。
アメリカの未来は、イギリスです。
「日が沈まぬ帝国」と言われた大英帝国は、
今や人々の記憶の中にあります。